高校時代

発達障害児の身分証明書

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コウは療育手帳を持っています。

マイナンバーカードは、作っていません。
本人が判断できる年齢になるまで、
私の一存で子どもたちの分を作ることはしたくないと思っています。

コウは顔写真付きの身分証明書としては、
「障害者である」という証である療育手帳しか持っていないことになります。

ところで、私には40年以上に渡る「推し🎤👩‍🎤🎸」がいます。
中学生の頃から大好きで、ファンクラブに入り、CDやDVDを買い、コンサートも行っています。
近年のコンサートは、チケットの転売を防止するために、
会場での本人確認がとても厳密になりました。

もしコウが将来「推し」ができて、ライブに行ったとして、
本人確認の証明書として「身体障害者手帳」は許可されるが「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」は認められないなどという出来事があったとしたら、
二度と「その日の『推し』のライブ」はないのに、苦労して取ったチケットなのに、
入ることができずにどんなに傷ついて取り返しのつかない残念な思いをするか。
障害者手帳は、一般の人にとっては見慣れない物です。
その日のライブ会場を担当した係員の認識不足の一因だけで、そのような事が起こりえると知りました。

多大な手間をかけチケットを取って、万事繰り合わせて遠くから会場まで足を運んで、
わくわくしながら開場までの列に並んで、「本人確認の証明書が不十分」という理由で、
当日の開演直前に入場不可となったら…想像するだけで泣けてきます。

それで私は、コウに「原付の免許を取ってみては」と提案しました。
「療育手帳」以外に、顔写真付きでコウの身分を証明するもの。
1年かかっても2年かかっても、挑戦する価値があると思ったのです。
原付バイクを運転する機会はないけれど、
むしろ機会がないからこそ、事故を起こすこともなく、ゴールドカードになって、
持っているだけで生涯コウを支え守ってくれる物になると思いました。

試験を受ける時期として、高校3年生の夏休みと設定しました。
高校2年生の2月に、週1回通所していた学習支援型の放課後等デイサービスに
「原付の学科試験に取り組んでほしい」「マークシート方式の回答にも慣れさせてほしい」とお願いしました。
デイサービスでは快く引き受けてくれました。

スマホに原付学科試験問題のアプリを入れて、
通学の地下鉄でも取り組むように言っておきました。
(実際やっていたかどうか不明です。コウは時々しょーもない嘘をつくので。笑。)
夕食後に私と一緒にアプリで10問ずつ解いてみました。
休日の朝食後の勉強時間に、原付の乗り方の動画を視聴しました。
学科試験の冊子の問題集を買って、マークシートの書式を見たりしました。

私は普通自動車運転免許証を18歳の時に取得した以降30年以上、日常的に運転し続けてきました。
それでも原付の学科試験問題は、引っ掛け問題も多く、意外と難しいと感じました。
情けないことに、下手したら30%、良くても70%程度しか正答できない日々でした。
コウより先回りして覚えて、コウに教えようと思うものの、
加齢による脳の退化もあり、空回りしていました。
ほぼ無言のコウとともに問題を読み解答解説を読み、
ちょっとオーバーリアクション気味の私が隣で学習していただけでした。
コウも良くて70%くらいの正答率でした。

「停止距離」「空走距離」「制動距離」などの難しい用語もあるし、
「必ず」「絶対に」「すべて」「~しなければならない」といった言葉が使われている問題は、例外もあり注意が必要です。
原付免許の学科試験は、〇か×の二択問題。問題数は48問、正答率90%以上で合格です。
合格率は50%(2人に1人)だそうです。
簡単なイメージの割に、実際にはかなり厳しい合格ラインです。

高校2年生の春休みに自動車学校で行われる「原付講習」に申し込みました。
幸い、自宅から歩いて行ける場所でした。
コウは20人以上の受講者とともに3時間ほど、座学と外での実技を受講していました。
私はロビーで読書をしながら待っていました。

さらにその春休み中、ダメもとだけど、
場慣れのために学科試験を受けに行ってみようか?と誘い、
大きな建物の運転免許試験場に行きました。
多くの受験者がいました。
大型自動車の試験の人たちもみんな同じ会場での受験で、
コウは原付で30分間と試験時間が短いので、途中退席のようにして会場から出てきました。

午後の合格発表までの待機で、コウと食堂でラーメンを食べながら
「次にここに来るのは夏休みだな。その頃にラーメンでは暑いだろうなぁ。何回来ることになるかな」と思いました。

そして合格発表。
多くの受験者たちとともに電光掲示板を見つめていると、

な、ん、と!!
コウの番号が!!!

コウは、17歳で、原付の試験に、一回の挑戦で合格したのです。
奇跡が起こりました。

原付講習を受けた直後だったのも、記憶に新しくて良かったのかもしれません。
勉強を始めてからちょうど2か月でした。

合格者への講習を受け、いよいよ出来上がった免許証を受け取って、コウは会場から出てきました。
嬉しそうではあるものの、淡々とした表情のまま、私に免許証を渡して見せてくれました。

コウは「運転免許を取るのは、高等支援学校卒業後すぐに仕事で必要な人以外は校則違反だから」とポツリと言い、
誰にもそのことを言わずに、進路のエントリーシートにも書かずに、高校を卒業しました。🤣

新品同様の問題集は、協力してくれた放課後等デイサービスに寄付しました。
通所者、誰も受けないかもしれませんが(^^;)

コウの原付の免許証は、まことに輝かしく、
普段は、大事に自宅の引き出しにしまってあります。
引っ越しした時の各所住所変更届は、免許証の提示で済むのがとてもラクでした。

ABOUT ME
ホタル
発達障害児【特別な支援を要する男の子】のママ。フルタイム勤務のシングルマザーです。