コウは補助輪付きの自転車は大好きで、幼児期から乗っていました。
でもバランス感覚が弱いコウは、公園の10㎝程度の高さの平均台のような遊具の上を歩くのでも、落ちるのを恐がって手をつないでほしがりました。
補助輪なしの自転車は、とても無理だと思いました。
3歳下の妹のアサキに、補助輪なしの自転車の乗り方を教えたことはなかったと思います。
親としては、妹はいずれ乗れるようになるとは思っていましたが、
第一に自由に乗るようになったら交通事故に遭いやすくて心配だし、
兄のコウが乗れないので、兄とかけ離れて先に成長してくれなくていいという気持ちもあったことは否定しません。
積極的には教えなくてもアサキは小1には自転車に乗れるようになっていました。
3歳下の従弟も、7歳下の従弟も、次々自転車に乗れるようになりました。
コウは一生自転車に乗れないのかな、と思いました。
この成長期に、挑戦もしないでいたことで、のちのち後悔するのも…と思って、
小6の時に作業療法の放課後等デイサービスに相談しました。
作業療法士さんは「バランスを取るのも難しいかもしれないし、次々と左右交互に自転車のペダルを踏み続けることができるかどうか…」と言いました。
小児発達外来の医師に相談しました。
「補助輪を片方だけはずして、練習してみてください」と言われ、自転車販売の大型店に行って事情を話しました。
店内でいろいろ試乗した挙句に「補助輪を片方だけはずした状態で売るサービスはしていません」と断られました。
片方分の補助輪の金額しか払わないと言っているわけでもないのに断られ、
障害児への理解はしてもらえないのだと失望しました。
数か月後、近所の商店街の小さな自転車屋さんのおじさんに相談してみました。
おじさんは「補助輪を片方だけはずしても、うまく自転車に乗れるようにはならない!バランス感覚は養われない」と怒りながら言って、
「両足がしっかり地面に付く自転車を用意して、両方のペダルをはずして(ストライダー化して)、練習してごらん」と言いました。
従弟から両足がしっかり地面に付く自転車を借りて、おじさんの自転車屋さんに持って行くと、ペダルをはずしてくれました。
「左右に曲がる時は体も傾けるんだよ」とご自分が小さな自転車に乗って実演してコウに見せてくれました。
コウは身長に対してかなり小さな自転車にもかかわらず嫌がることなく自転車の練習をしました。
そのまま秋が来て雪が降り、次の年、春に自転車にペダルを付けてもらったら、なんと乗れるようになっていました!
中1の春に、コウは自転車に乗れるようになりました。
折り畳みの自転車は大人用でも車輪が小さく、それでいて見た目がカッコイイので、中古でしたが買い与えました。
折り畳む時はないので、普通の自転車に外観が近づくように、カゴを付け、カギも付けてもらいました。
小学校時代の先生や、作業療法の放課後等デイサービスに、報告の手紙を書きました。
今後、コウのような子がいたら、ストライダー化した自転車で試してみて!という情報になればと思って。
アサキとコウと私の3人で、近くの公園やイオンに自転車で行けるのは、夢を見ているようだと思います。