コウの苦手は、「あいさつ」です。
朝起きた時から「おはよう」も言ってくれません。
「おはよう」と私が言うと、蚊の鳴くような声で「うん」と返事をしています(笑)。
学校では根気よく指導されているので、
その成果があり頑張ってあいさつしているとの先生からの連絡帳の情報ですが、
気を抜いていたり、予想外の場面であいさつを必要とすると、
咄嗟には対応できていないようです。
世の中には、対人が大の苦手な人もいて、人と濃密に関わりたいと思っている人もいて、
極度の人見知りや、過緊張な人、いろんな人がいます。
「大きな声で滑舌よくあいさつができる人は、確実に信頼のおける良い人だ」
というのは、本当でしょうか。
オレオレ詐欺の加害者は、きっと電話口で、さわやかに元気よくあいさつして、
巧みにお年寄りをだますのではないでしょうか。
物事はあいさつに始まり、あいさつに終わる、という定説に対して、私は懐疑的です。
あいさつが苦手で世渡りは下手っぽいけど、心の中はとっても善良な人もいます。
私は看護師です。
看護実習生が病院実習にいると、医療スタッフから
「学生はあいさつもしない」との苦言が多々あるのですが、
実習生は、実習させていただくことのありがたさを教育されすぎた結果、
病院内にいる今、自分ごときが声を出すことで医療スタッフの仕事の手を止めていいのかとすら思っています。
「若い人はあいさつもしない」と思うのだったら、
模範として年上のご自分から実習生にあいさつしてはいかがでしょうか、
そうしたら、実習生もあいさつしていいのだ、と安心してあいさつを返すのではないかなと思っています。
社会で、礼儀や敬意を表現するためにもあいさつが求められているのであろうことは確かなので、
学校でコウがあいさつできるように先生方が指導してくれて、とてもありがたいなと思っています。
私も、コウと外出して、誰かと会ったら、あいさつを促します。
でもコウが私のところに生まれて来てくれたおかげで、
「何よりもまずあいさつが重要だ」という価値観に疑問を持つことができて、
例えばあまりあいさつをしてくれない同僚がいたとしても、
ことさらに自分が傷つく必要もなく、
失礼な人だと決めつける必要もないと、心を広く持てるようになりました。